ストーンズが流れる「再会の時」
「The Big Chill」。邦題で「再会の時」。
アメリカの団塊、ベイビーブーマーたちが主人公。ミシガン州立大学の仲良しグループのメンバーの一人が自殺、その葬式に久し振りに会い、数年ぶりに仲間で過ごした週末を描いた作品。作られたのが1983年なので、ベイビーブーマーたちが30代後半、社会での中堅として活躍していたころの話である。彼らは会社重役、弁護士、医師、俳優、記者、主婦、と安定した生活をしている。ベトナム帰りで今もそれが心の傷になっているメンバーが一人いる。アメリカ反体制の象徴だったヒッピー文化の一翼をかついでいた当時の学生たちだが、大人になればみんなそれなりに落ち着いたのだ。
会話はポンポンはずみ、時代を思わせる語彙がたくさん出てくるが(体制打倒を叫んだ、実存主義は君の十八番、ワシントン大行進の夜・・・)、映画公開時、劇中の音楽も話題になった。マービン・ゲイの「悲しいうわさ」、アレサ・フランクリンの「アイ・アム・ア・ウーマン」、もっとあるけどタイトルがわからない。
紹介した音楽はローリング・ストーンズの「無情の世界(You Can’t Always Get What You Want)」。映画の最初のほうだが、故人の葬式で「亡くなったアレックスが好きだった歌を友人に弾いてもらいます」と牧師が言う。この曲が流れると悲しみにくれていた友人たちの顔に笑みがもどる。
監督はローレンス・カスダン。出演している俳優たちは、グレン・クローズ、トム・ベレンジャー、ウィリアム・ハート、ケビン・クライン、ジェフ・ゴールドグラム、ジョベス・ウィリアムス。亡くなった役はケビン・コスナーで、彼のシーンは本番では全部カットされたそうだ。オールスターズの出演で、彼らもベイビーブーマーである。もう還暦前後の人たちだが、アメリカ映画界には、ニコルソン、デ・ニーロ、パチーノ、レッドフォード、ホフマンと少し前の世代がバリバリに頑張っているので、どうしても彼らは「永遠の中堅」という感じがする。
私はこの映画が大好きで、昨年このDVDをアマゾンで取り寄せた。届いた翌日、ジャーナリストの筑紫哲也の訃報を知った。この映画が公開された1984年、東京新宿の「シネマスクエア東急」に見に行った。そのときのパンフレットに筑紫哲也が「この映画は日本でこそ作られるべきだった」と書いてあったのを思い出した。自身よりも一世代若い団塊の世代が経験した社会的出来事に、ジャーナリストとして現場にいた彼は、国は違えど映画の主人公たちにシンパシーを感じたのだろう。筑紫哲也とその世代を描いたこの映画は私の中で結びついている。
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